土地の売却で土壌汚染が発覚しても、瑕疵担保責任を負わなかった裁判例

土地の売却で土壌汚染が発覚しても、瑕疵担保責任を負わなかった裁判例

瑕疵担保責任を負うケースと負わないケースは、経験を積まないと判断がつきません。この記事では土壌汚染や地中の障害物が見つかっても瑕疵担保責任を負わなかった事例を紹介します。土地の売却を考えている方は参考にしてください。

今回は売却者Aが土地を売却後、購入した買主Bがさらにマンション業者Cに転売を行ったところ「地中障害物及び土壌汚染」が発見され、その処理費用をBがAに請求した、という裁判の判例です。

取引の経緯

この案件においては市有地払い下げも含まれており契約時、AおよびBの間で

  1. 本件土地のうち市有地を本件契約の目的物から抹消する
  2. 市有地の払下げに要すると想定される金額として、売買代金を1,500万円減額する
  3. 地中障害の撤去に多大な費用が発生すると思われるため、売買代金のうち500万円を本件契約の隠れた瑕疵の担保条項及び土壌汚染の改良費用を担保するため支払いを留保する
  4. 留保金の清算時期は、地中障害の撤去又は土壌汚染改良に係る費用の総額が判明した時期とする

という内容の覚書も交わされていました。また売買契約書内にも

  • 売買契約には、「隠れた瑕疵がある場合の請求は引渡後2 年を経過したときはすることができない
  • 土壌汚染に関する法令の基準値を超える土壌汚染が検出された場合、又は、地中障害物等が存し、買主がマンションを建築・分譲するに当たり、撤去に多大な費用を要するときは、本件契約の目的を達成することができない場合に該当し、売主又は買主は本件契約を解除することができる

という項目を織り込んだ上での契約締結となっていました。契約締結後、土地を調査したところ本件土地の土壌に砕石・礫・コンクリート片等が混入していることが発見されました。その後、上記の覚書を交わし、処理完了後A・B間で土地売買が締結し、売買契約は履行を完了しておりました。

その後BはCに土地を売却し、問題が発生したという流れです。

訴えの内容と判決

  • Bは地中障害物及び土地汚染は隠れた瑕疵に当たり、Aに支払った金額の損害を披った
  • 覚書で、A等が地中障害物の撤去費用を支払うとの合意がある
  • A等には地中障害物等の説明義務ないし除去義務違反があるとして、債務不履行に基づく損害賠償請求を選択的に行った
  • 合計6,137万円余を請求する裁判を提起

土地調査を行ったCより「土壌環境調査費」「PCB汚染土搬出処分費」等の計3,754万円余の請求を受けて支払いました。この支払が発生した土壌汚染が「瑕疵」および「覚書内の撤去費用支払い合意」「説明義務違反」に当たるとし、BはAに対して6,137万円の請求を行いました。

結論としてBの訴えを裁判所は棄却し、請求内容は全額認められませんでした。

理由としては以下です。

  1. Aは、覚書による瑕疵担保の除斥期間の始期に係る合意があること、損害賠償請求権が保存されていることを主張している。→契約に基づき、瑕疵担保を請求できる期間が定まっており、それを経過している。つまり「瑕疵担保を認めない(0年)」というような一方的な契約ではなく、上記の契約内容のように「引き渡し後2年」かつ損害賠償請求権も保存しているため、これを経過している本案件の請求権は存在しない。
  2. 覚書は、瑕疵担保に基づく損害賠償請求権を「担保するため」に留保全の清算時期を定めるものにすぎないというべきで、瑕疵担保責任の成否は、契約書の条項によって定めるほかなく、覚書が契約書の条項に言及していないことに照らしても、覚書がAB間の瑕疵担保責任に何らかの変更を加えるものということはできない。→覚書には記載はあるものの、あくまでそれは損害賠償請求権の担保および生産時期の設定であり、また契約内容にも覚書内で触れられていないため覚書により(1)の契約書記載内容を変更するものとは認められない。
  3. 最高裁平成4 年10月20日判決より損害賠償根拠を明確にすべきである
  4. 除斥期間の始期に係る合意及び損害賠償請求権の保存は認められない
  5. 費用負担合意及び地中障害物等の説明義務ないし除去義務は認められない

まとめると「契約により請求可能な2年は経過しており」、なおかつ損害賠償に対しても根拠がないため認められない、という結果です。

土地売買における活用

これにより、「契約書において明確に請求権を明記」し、かつ「瑕疵担保責任を負わない」といった契約ではなく「2年」という請求可能期間を設け、かつそれが経過していれば瑕疵を知りつつ売却したという事例でもない限り損害賠償の支払い義務は発生しないという判例になります。

もちろん内容によっては例外もあるでしょうが、基本的にキッチリと賠償期間を設けたうえでそれを消化すればその後は安心であるという事例です。

不動産を売買する際、ついつい「売主は瑕疵担保責任を負わない」という条項を入れたくなりがちですが、こういった事例もあるのでケースによって使い分けるようにしましょう。

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