タワーマンション購入による節税の規制で、固定資産税や相続税は変わるのか

タワーマンション購入による節税の規制で、固定資産税や相続税は変わるのか

問題視されているタワーマンションによる節税。タワーマンションの高層階は何故、節税に使われているのかを解説してもらいます。また不動産会社の営業マンに言われるがまま購入してしまった方は、そのリスクも考えて、売却や賃貸など今後の計画を立てましょう。

相続税対策として注目されつつも「近々、規制が入るかも…」と噂されているタワーマンション節税。今回はそんな節税方法の解説と、規制された場合どのような変化が訪れるのか、というのを以下の物件データをサンプルとして紹介・解説していきます。

  • 購入価格:1億5千万円
  • マンション総戸数:120室
  • 土地の広さ:500平米
  • 路線価:200万円

マンションと一戸建ての相続税評価額計算

タワーマンションがなぜ相続税評価に有利なのか、ということを知るためには「固定資産税評価額」の計算方法を知る必要があります。

固定資産税評価額とは固定資産において「この資産はこういった方法で金額評価しますよ」といった基準です。算出された資産評価をすべて合計し、そこから相続税控除枠と呼ばれる非課税分を差し引いた後、税率を掛け合わせることで「相続税」が決定します。つまり「実際の資産価値よりも評価額が低く計算されればされるほどお得になる」という数値です。

不動産における価格というのは「土地」と「建物」部分の評価に分かれますが、相続税減額においてポイントとなってくるのは「固定資産税評価額」です。意外と知られていないことですがマンションを購入した場合、「全体の敷地面積÷購入分」の比率、つまり所有権がある敷地分に応じて土地の所有権もついてきます(契約内容によっては例外あり)。

これらを加味したうえで、上記のサンプル物件が「一戸建て」の場合と「120戸のマンション」の場合の固定資産税評価を計算してみると、以下の式になります。

固定資産税評価額=路線価×保有土地平米数

一戸建ての場合
200万円(路線価)×500平米=1億円

120戸のマンションの場合
200万円(路線価)×500平米÷120(120室あるうちの1室が自分の持ち分のため)=約83万円

同じ路線価(評価基準)である不動産を保有していても、一戸建てかタワーマンションかでこれだけの評価額差がでます。階数が高いタワーマンションになればなるほど戸数、つまり数値割の比率が増えるためそれだけ「評価額」が下がります。これがタワーマンション節税の基本的な仕組みです。

国税庁の見解と今後

上記を見ていただいた上で、好意的に見るなら「かなり有効な節税方法」、否定的に見るなら「不公平だ!」という感想を抱かれると思われます。

流石にこういった現状および現行法に問題を感じた(プラス税収も落ち込んできている)ので、平成27年10月29日に国税庁が行った記者会見にて「行き過ぎた節税策を行った場合には国税側が評価額を指定し直すこともありうる(意訳)」との見解を示すとともに、税理士向けの会報誌などでこの方法を規制する可能性を示唆し、あまり勧めないようにと暗に勧告する姿勢を維持しております。

どの程度「規制」および「評価方法の改定」を行うかはまだわかりませんが、ケースとしては「相続税評価が80万弱で済む」と考えていたものが、「1億円の評価になる」というのも十分に考えられます。
もちろんこれは極端な例で、流石に土地保有率が100倍以上も違う一戸建てとタワーマンションで同じ比率が適応されるとは考えにくいですが、「売買価格に応じて資産評価額を出そう」という試みになる可能性は十分に考えられます

※2017年現在も、相続開始(資産保有者の死亡および相続手続き開始)3年以内に取得した不動産は上記計算式ではなく取引価格で資産評価が行われます。

まだ正式に規制が決定したわけではありませんが、すでにタワーマンション節税を行っている、もしくは行おうとされておられる方は「上記の数字」をもとに、最悪のケースとして想定しておくことが必須であると筆者は考えております。

場合によってはリスクなども加味したうえで、すでに保有しているタワーマンションを売却し、ほかの節税方法にシフトすることも必要になってくるのではないでしょうか。これを機に、一度相続税対策を見つめなおしてみることをお勧めいたします。

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