不動産を購入する際、「頭金」に相当する資金を親族に求めるという事例があります。こういった資金のやり取りを行うため、「贈与における相続精算課税制度」とい
【相続した不動産の売却】親名義・共有名義、税金と確定申告
相続した不動産を売却する時にポイントとなるのが名義変更と相続税です。また不動産を複数人で相続した場合は遺産分割でトラブルになることもあります。
相続手続きの流れ
- 法定相続人との話し合い(相続発生前)
- 相続の発生(資産保有者の死亡)
- 資産算出・調査
- 遺産分割協議(分割方法の決定も含む)
- 遺産分割協議書の作成
- 相続登記
- 相続税の納付(翌日から10ヶ月以内)
相続した不動産を売却する準備である名義変更にも時間が掛かります。相続税等の費用も発生しますので課税される税金と控除される税金を予めシミュレーションしておくのが望ましいです。
法定相続人との話合い(相続発生前)
後々のトラブルを防止するため、相続資産の保有者が法定相続人を交えて資産の分割・管理などの情報共有と、死後の手続きなどを話し合う場を持つことが大切です。
とくに現金などと違い分割できない不動産(持家)に関する取り決めなどはキッチリとしておかなければ後々トラブルになりがちです。ちなみに法定相続人の定義は民法にて以下のように定義されています。
直系卑属(ちょっけいひぞく)
- 配偶者(夫・妻)→常に相続権があります。
- 子供(実子・養子・内縁の妻の子など)→相続権第1位
注意点として、内縁(愛人)の子供には相続権はありますが、内縁自身には相続権はありません。
尊属(そんぞく)
上記の卑属が存在しない場合、法定相続人となります。
- 父・母・祖父母(第2位)
- 兄弟・姉妹・およびその子供(第3位)
尊属の相続権に関しては第1位がいない場合第2位に相続権が、1位および2位がいないときは3位に相続権が発生します。
相続の発生(資産保有者の死亡)
相続順位 | 相続人と相続の割合 | |
---|---|---|
第1順位 | 直系卑属 (被相続人の子供や孫、ひ孫) 1/2 | 配偶者 1/2 |
第2順位 | 直系尊属 (被相続人の父母や祖父母) 1/3 | 配偶者 2/3 |
第3順位 | 被相続人の 兄弟や姪・甥 1/4 | 配偶者 3/4 |
資産保有者が死亡した場合、上記のような比率で相続が発生します。配偶者・もしくは子供がいる場合は第1順位の比率で相続が、配偶者がいて子供がいない場合第2順位で、さらに祖父母がいない場合は第3順位で相続が発生します。
また配偶者がいない場合はそれぞれの比率に応じて資産が分配されます。
例1:資産1000万円、配偶者生存、子供2人の場合
1000万円×2分の1=500万円→これが配偶者に。残り500万円をそれぞれ2分の1子供に相続でそれぞれ250万円ずつ。
例2:資産1000万円、配偶者死亡、子供二人の場合
1000万円÷2人=500万円→子供で等分。
例3:資産1000万円、配偶者生存、子供なし、祖父母3名生存(1名死亡)
1000万円×3分の2=約667万円→配偶者に。差額333万円÷3人=111万円ずつ第二位相続人に。
例4:資産1000万円、配偶者死亡、子供なし、祖父母3名生存
1000万円÷3=約333万円ずつ頭割り。
資産算出・調査
前項の計算方法に基づいて遺産分割を行いますが、まずは「いくらぐらい資産・負債」があるのかを調査する必要があります。特に、相続においては資産だけではなく借金のような負債も引き継がれるので注意が必要です。
プラスの財産の調査方法
財産の種類 | 調査方法 |
---|---|
不動産(土地・建物) | 固定資産税通知書や権利書、市区町村発行の名寄せ等 |
借地権、借家権、賃借権、地上権、温泉権等 | 契約書や登記簿謄本 |
現金、小切手、預貯金等 | カードや通帳から判断する。ない場合には、金融機関に出向いて残高証明書や名寄せを取得する |
株式、公社債、投資信託等の有価証券 | 金融機関の口座の記録、通帳等の照会 |
故人が受取人になっている生命保険金 | 保険証券等 |
マイナスの財産の調査方法
財産の種類 | 調査方法 |
---|---|
借金(カードローン、クレジットカード会社への支払い等) | クレジットカード、故人宛の手紙や請求書、全部事項証明書の抵当権の記載等から調査。もしくは信用情報の照会 |
未払いの税金(固定資産税、所得税、住民税等) | 故人宛の手紙や督促状。行政側に問合せ |
個人保証債務(連帯保証人) | 契約書・請求書の確認 |
この中で特に注意が必要なのは「個人保証債務」です。個人間でのお金の貸し借りおよび連帯保証は契約書がキッチリと保管されていない場合把握するのが難しく、気が付かず相続してしまうことが多々あります。
こうなってしまっては手遅れですので、生前にキッチりと確認をしておくか、相続時に限定承認と呼ばれる「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認」する通知を家庭裁判所に通知・審判してもらうことがオススメです。詳しくは後述します。
遺産分割協議(分割方法の決定も含む)
上記のような形で法定相続人を決定し、資産の把握も終われば遺産を分割する協議に入ります。ここで特に問題になるのは「家」や「動産(車・宝石など)」のいわゆる「現金のように分割できない資産」をどうするのかという事です。
具体的な解決策(遺産分割方法)としては以下があります。
- 現物分割・・・家は長男、車や貴金属は次男、といった形で現物のまま分割する方法。
- 換価分割・・・家やその他動産をすべて換金(現金化)し、当分分割する方法。
- 代償分割・・・家などの現物資産の評価額相当を現金などで支払う方法。たとえば家の評価額が1000万円・相続人二人なら「家を長男がもらう代わり、長男は次男に自己相続分の差額500万円を支払う」という方法。
この中で最も用いられる方法は「現物分割」、もし相続資産が家などしかない場合はその他となります。
またこの協議の段階で「限定承認」の協議も行います。これは相続の事実を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し出なければならず、相続人全員の承認が必要です。
万が一、「隠れた借金等」があった場合もこれを行っておくことで相続分以上の負債は負わない(プラスマイナス0)となりますので、いざという時のリスクに備えることができます。
遺産分割協議書の作成
上記の遺産分割で合意した内容を書面にて作成し、すべての相続人の署名・捺印を行った書類を作成します。これにより相続資産における「不動産などの所有権の移転登記」や「凍結口座の解除」などを行う際の添付書類として利用でき、次の段階に進めます。
相続登記
相続した不動産の登記手順です。まず、法務局にて不動産の登記事項証明書を取得します。
次に必要書類として、戸籍謄本、住民票、固定資産税評価証明書を集めます。不動産および相続状況によってはこれ以外にも提出を求められる可能性はありますが、基本はこれら3種類です。
そして次に法務局ホームページより申請書、相続関係説明図の雛形を入手し、遺産分割協議にて決定した内容通り記載します。
最後に申請書に印紙を貼り付け、必要書類および遺産分割協議書を合わせて提出することで手続きは完了です。尚、申請に張り付ける印紙ですが、これは「登録免許税」の納付です。申請時、固定資産税評価額の0.4%の金額を収める必要があります。
相続税の納付(翌日から10ヶ月以内)
上記と並行して、相続税の納付を相続を知った翌日から10か月以内に収めなければなりません。手続きや協議に手間取ってしまうとこれを超過してしまうことがございますので注意が必要です。
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